ユーボイス(You Voice)は、サムズコーポレーションが開発したソーシャルメディアアプリ。
開発主任は、サムの同級生であり、共同経営者だったビル・モービルである。
ユーボイスが開発されるまでの経緯
サムは大学3年のとき、自分の進路に迷っていた。
このままだと、兄たちと同じく父親の会社に入れられてしまう。
かといって、誰かの会社でペコペコしながら働くのも性に合わないと思っていた。
そんなとき、食堂の片隅でパソコンをカタカタ叩いているビルの姿が目にとまった。
後ろからパソコンを覗くと、プログラミングのような英数字をひたすら打ち込んでいた。
サムは直感的に「こいつは使える」と思った。
人見知りのビルから話を聞くには時間がかかったが、どうやら趣味でゲームアプリを作っていることが分かった。
「なあビル、お前の趣味を仕事にしてみないか?」
サムの言葉に、ビルは目を輝かせていた。どうやら、彼にとってもそれが夢だったようだ。
ビルの信頼を得たサムは、ある提案をする。
「無名のオレたちがいきなりゲームアプリを当てるのは、正直難しいと思う。
だから、まずはオレたちの会社を知ってもらうために、誰もが使いたがる便利なアプリから開発するのはどうだ?」
サムのいうことにも一理あると思ったビルは、どんなアプリを作ればいいのかと問いかけた。
「地域密着型のソーシャルメディアだよ」
サムは満面の笑みでそう答えた。
サムとビルの頭文字を取ってつけた会社『S&B』がユーボイスを発表すると、サムの思惑通り、町の人々が使ってくれるようになった。
とくに、若い世代はマッチングアプリとしてユーボイスを利用する人が多かった。
設定項目にある承認ボタンを押していると、アプリをダウンロードしている男女が近くにいると知らせてくれる機能があるため、声をかけるきっかけとなったからだ。
当然、マッチングアプリ要素が強いと、未成年に関する様々なトラブルが発生する。
そのため、ユーボイスにも様々な問題が指摘され始めた。
だが、サムにとってこの現状は予想の範囲内のことだった。
大事なのは、よくも悪くもユーボイスの知名度をあげることだったからだ。
「そろそろ、より多くの人と繋がるための機能を充実させようか。あとはAIだな。より簡単に投稿できるソーシャルメディアにできれば、文章が苦手な層も取り込める」
会社2年目にして30人の従業員を雇う社長となったサムは、ビルにそう指示を出した。
だが、ビルは迷っていた。彼が作りたいのは、今も昔もゲームアプリだったからだ。
そんなビルに対して、サムは「ここまで事業が大きくなったんだ、今更そっちに舵は取れないよ」と言い放った。
サムの言葉がきっかけとなり、ビルは会社を去った。
すでに優秀なプログラマーを雇用できていたサムにとって、ビルの退社はそれほど大きな損失にはならなかった。
その後、サムは会社名を『サムズコーポレーション』に改名し、ユーボイスを世界中で使われるソーシャルメディアアプリに生まれ変わらせていった。